《トラウマ治療は簡単ではありません》 EMDRという治療は、ある日突然来ていただいて、その日に実施するということは難しいものがあります。医師の目から見て、PTSDであるかどうかの適切な診断をすること、治療方針を決めることが大切です。EMDRをする方針を医師が決定し、実施に必要な情報収集を心理スタッフと進めてもらう準備に入っていただき、簡単なケースでも数回の面接、複雑なケースの場合、何カ月も何年もかけて準備をしていくような場合もあります。これはある病気に対して外科である手術をする際に、術前の検査を行い治療方針を決定するのと似ているかも知れません。幼少期の性被害とか、事故・犯罪に巻き込まれ被害や後遺症が持続しているケースなどでは時間がかかるような印象があります。 治療効果としては、single PTSD、つまり外傷的出来事があるまでは健康的に過ごしており、外傷的出来事に突然さらされて発症したPTSDに対する有効性は大変高いように思います。それに対して、幼少期から長期間に渡り慢性的に外傷的な環境にさらされ続けた場合、つまりcomplex traumaとか、アダルトチルドレンという言葉で言われているケースは難しい印象があります。感情の麻痺、健忘、否認などが治療を難しくしていたり、怒りや恨みが強すぎて治療を難しくしていたりするような気がします。しかし、根気よく過去を振り返ったり、恨みや怒りではなく幸せになろうとする健康的な力の強い人の場合、治療がうまくいくこともあります。 例えば胃がんの手術を行うにしても、同じ癌の進行度であっても、手術が成功して長く生きられる人もあれば、手術したにもかかわらず、早くに再発・悪化が見られる人もあるように、個人差が出てきます。これは何によって左右されるのか、本人の生命力としか言い様のないものがあると思います。PTSDやトラウマの治療においても同じことを感じます。回復力の強い人、弱い人があるためなのか、よい結果が出る人、でない人、ばらつきがあるのを感じます。 また、最近感じているもうひとつの問題は、トラウマの問題に見えて、実はそれだけではない他の問題が重複しているケースです。トラウマの問題+うつ病、トラウマの問題+広汎性発達障害、などなど、可能性は色々あるでしょう。体の病気でも同じですが、高血圧に糖尿病を合併しているなど、複数の病気の重複が起こっていると治療の難しさも増してきます。ですから、専門家が慎重に判断していくことが大切と言えるでしょう。 私の作ったEMDR、PTSDに関するトラウマのホームページも参照ください。 毎日新聞の2002年5月21日の朝刊にEMDRについての記事が載りました。2004年12月24日の週刊朝日にも載りました。 |